本シリーズ記事では、クエリ レイヤーの公開方法・ ArcGIS Maps SDK for .NET でクエリ レイヤーを利用する方法を2部構成でご説明します。その中でも今回はエンタープライズ ジオデータベースを用いたクエリ レイヤーの公開までの手順に関してご説明します。
今回ご紹介するクエリ レイヤーは ArcGIS Pro や ArcGIS Enterprise 等でマップに格納される SQL クエリです。クエリ レイヤーを利用することで ArcGIS にてデータベースのテーブルやビューにアクセスすることができ、特定のフィールドや値の抽出、テーブル結合等を行うことができます。テーブル結合をするにあたり、一般的なジオデータベースのデータベースは正規化されておりませんが、エンタープライズ ジオデータベースでは DBMS を利用するため正規化されたデータベースを利用することができます。また、クエリ レイヤーは ArcGIS Enterprise に公開可能なため、ArcGIS Maps SDK によりクライアント アプリケーションから結合した個々のテーブルを更新することができます。DBMS を利用するため、本シリーズ記事の内容を踏まえ、お使いの既存のデータベースを利用した地図 アプリケーションの作成が可能となっております。
※エンタープライズ ジオデータベースとクエリ レイヤーの詳しい概要、作成方法に関しては「データベースのテーブルを使用できるクエリ レイヤー 前編」をご参照ください。
※ArcGIS Enterprise の導入方法はこちらのサイトのインストール ガイドをご参照ください。
今回クエリ レイヤーを作成した環境は下記となります。
作業環境
オペレーティング システム (DBMS サーバー) | Windows Server 2022 Standard (64-bit) |
ArcGIS クライアント | ArcGIS Pro 3.2.2 |
ArcGIS サーバー | ArcGIS Enterprise 11.1 |
DBMS | SQL Server 2022 Enterprise (64-bit) |
前述の通り、エンタープライズ ジオデータベースを用いたクエリ レイヤーではキーとなるフィールドを基に結合し、必要な項目を抽出することができます。項目に空間情報がない場合、レイヤーではなくスタンドアロン テーブルがマップに追加されます。作成されたクエリ レイヤーは通常のフィーチャ レイヤー同様にジオプロセシング ツールの利用やシンボルの変更などを行うことができます。
次の例では座標情報テーブルに対し都道府県コードと市区町村コードで市区町村情報や市区町村統計情報、市区町村の家賃平均等を結合したクエリ レイヤーを作成しています。
ArcGIS Pro にて上記クエリ レイヤーをマップに追加すると下図のように表示されます。
作成したクエリ レイヤーは ArcGIS Pro にてシンボルの変更やクエリ レイヤー自体の編集などを行ったうえで後述の公開作業を実施します。
次に、作成したクエリ レイヤーを ArcGIS Enterprise に公開する方法をご説明します。公開方法はレイヤーとスタンドアロン テーブルで異なります。クエリ レイヤーを公開することで各種アプリケーションや ArcGIS の各種 API / SDK にて利用することができます。以下に順を追って説明していきます。
レイヤーの場合
1. ArcGIS Pro のコンテンツ ウィンドウにてクエリ レイヤーを選択し [共有 (H)]、[Webレイヤーとして共有 (S)] の順に選択します。
2. 名前を入力し、[登録済みデータを参照] のフィーチャにチェックを入れます。
3. 自身が共有したいグループにチェックを入れ、[分析] ボタンを押下しエラーが発生していないことを確認します。
4. 確認ができましたら、[公開] ボタンを押下します。
5. ポータルに接続し、クエリ レイヤーが公開されていることを確認します。
6. 公開した クエリ レイヤーが適切に表示されることを確認します。
スタンドアロン テーブルの場合
1.ArcGIS Pro にて新たにマップを作成します。
2.作成したマップに対象のスタンドアロン テーブルを追加します。
3. [共有]タブの [Webレイヤー] の [Webレイヤーの公開] を選択します。
4. 名前を入力し、[登録済みデータを参照] のフィーチャにチェックを入れます。
5.自身が共有したいグループにチェックを入れ、[分析] ボタンを押下しエラーが発生していないことを確認します。
6. 5.にてエラーが発生した場合、解消します。
7.エラーが解消されていることを確認し、[公開] ボタンを押下します。
8.ポータルに接続し、スタンドアロン テーブルがレイヤーとして公開されていることを確認します。
9.公開したクエリ レイヤーが適切に表示されることを確認します。スタンドアロン テーブルのため、テーブルのみが表示されます。
本記事ではエンタープライズ ジオデータベースを用いたクエリ レイヤーの特徴と公開方法をご説明しました。クエリ レイヤーにより他のシステムで利用されている DBMS のデータの可視化や抽出をすることができますので、是非お試しください。
次回はエンタープライズ ジオデータベースを用いたクエリ レイヤーを ArcGIS Maps SDK にて利用する方法をご紹介します。
・ArcGIS Enterprise 基本構成 セットアップガイド
・エンタープライズ ジオデータベース セットアップガイド (SQLServer)