
はじめに
ArcGIS Pro SDK は ArcGIS Pro を拡張するアドイン開発ができる開発キットです。ArcGIS Pro のユーザー インターフェイスのカスタマイズや独自の機能を開発することができます。業務フローを効率的に実行するため、ArcGIS Pro をより使いやすく拡張することができます。
2026 年 6 月に ArcGIS Pro 3.7 がリリースされ、ArcGIS Pro SDK も ArcGIS Pro 3.6 のリリースとともにアップデートされました。これに伴い、SDK 開発者にとって重要なマイルストーンとなる、Microsoft の最新の長期サポート (LTS) リリースである .NET 10 への対応が実現しました。また、今回のリリースはマイナー リリース (3.x) であるため、ArcGIS Pro 3.0 ~ 3.6 で作成した既存のアドインは、再コンパイルなしで、3.7 でも引き続き動作します。
開発環境をアップグレードして新機能を利用する場合は、Visual Studio 2026 バージョン 18.3.2 以降が必要です。詳しい手順については、「What's New for Developers: Migrating to .NET 10 with ArcGIS Pro 3.7」を参照してください。
本記事では ArcGIS Pro SDK のバージョン 3.7 で拡張された機能についてご紹介します。
3D Analyst
バージョン 3.7 では、3 つの新機能が追加され、LiDAR データやサーフェス データを用いたプログラムによる処理の可能性が広がりました。
- LAS クラス コードの編集
API を通じて LAS クラス コードを直接編集できるようになりました。これは、ArcGIS Pro を終了せずに点群データに対して分類ワークフローを実装するアドインにとって便利です。
- テレイン レイヤーを使用したシェープの内挿
テレイン レイヤーをシェープの内挿のサーフェスとして使用できるようになりました。これにより、地形から導出された標高が基準となる 3D ジオメトリーのワークフローにおいて、より柔軟性が高まります。
- ポリゴンからマルチパッチへの変換
SDK では、TIN およびテレイン レイヤーの両方を使用して、ポリゴン ジオメトリーをマルチパッチに変換できるようになりました。これは、表面が押し出しされたフットプリントの鉛直方向の範囲を定義する 3D フィーチャ作成ワークフローにおいて、実用的な機能追加となります。
コード スニペットやサンプルについては、GitHub Wiki の 3D Analyst Data のコード スニペット および 3D Analyst のコミュニティー サンプルをご参照ください。
編集機能
バージョン 3.7 では、編集用の API が大幅に強化され、特に座標ジオメトリー (COGO) およびトラバースのワークフローにおいて大幅な改善がなされました。新しいArcGIS.Desktop.Editing.COGO 名前空間により、トラバースの作成、調整、閉合差の計算を含む包括的なインメモリー トラバース機能が、アドインのワークフローに直接組み込まれました。
- COGO 測定値からのインメモリー トラバースの作成
COGO 測定値からインメモリーでトラバースを作成し、閉合差の計算、調整、フィーチャの作成を行うことが可能になりました。これらすべてを、ワークフローの途中でディスクに書き込むことなく実行できます。これにより、プログラムによるトラバース計算を、より広範な編集ワークフローにシームレスに統合することが可能になります。
- トラバース コースのトラバース ツール UI への読み込み
アドインは、プログラムによってトラバース コースをトラバース ツールのインターフェイスに読み込めるようになりました。これにより、外部データソース (インポートされた測量ファイルなど) からの事前入力や、ユーザーによる確認や調整のためのスムーズな引き継ぎが可能になります。
パーセル
区画境界の処理をより正確にする、ジオメトリー レベルの2つの新機能が追加されました。
- 接線セグメントによるジオメトリー単純化
新しい単純化機能により、接線セグメントの間に位置する頂点を削除できるようになり、曲線境界で角度誤差を生じさせることなく、区画のジオメトリーを整理できます。
- 円弧パラメーターの計算
新しい計算機能により、半径、中心角、弦の長さ、および関連値といった円弧パラメーターが利用可能になり、曲線境界を含むパーセル ファブリック ワークフローの基盤となる要素を提供します。
マップの作成
マップの設定を扱う開発者向けに、小規模ながらも有用な機能がいくつか追加されました。
- プログラムによるマップ グリッド設定
API を通じてマップごとのグリッド設定やグリッドの表示/非表示を更新できるようになりました。これにより、マップ主導のワークフローを構築する際に、参照グリッドを手動で設定する必要がなくなりました。
- 編集セッションを開始せずにレイヤーの編集可否を確認
編集セッションを開始する前に、レイヤーが編集可能かどうかを確認する機能が提供されるようになりました。ユーザーに編集開始を促す前にレイヤーの状態を検証する必要があるアドインにとって、実用的な利便性の向上となります。
- 鉛直座標系の更新
座標系コントロールが更新され、鉛直座標系のサポートが強化されました。これにより、プログラムによる座標系管理が鉛直方向にも拡張されました。
ジオデータベース
アドインとバージョン管理されたジオデータベース (エンタープライズ ジオデータベース) との連携を改善する2つの新機能が追加されました。
- ポストおよびリコンサイルの拡張メソッド
ポストおよびリコンサイル操作用の新しい拡張メソッドが利用可能になりました。重要な点として、これらは ArcGIS Pro 版の「元に戻す/やり直し」操作スタックに対応しています。つまり、これらの操作は既存の編集セッション モデルにシームレスに統合され、ユーザーは必要に応じて操作をロールバックできるようになります。
- トラディショナル バージョニングにおける競合情報
開発者は、API を通じてトラディショナル バージョニング ワークフローの競合情報にアクセスできるようになりました。これにより、カスタムな競合レビュー環境の構築や、アドイン内で直接バージョン管理の状態を表示することが可能になります。
ユーティリティー ネットワーク
- 通信ドメイン ネットワークのサポート
SDK には通信ドメイン ネットワークのサポートが追加され、開発者はユーティリティー ネットワークのフレームワーク内で通信資産やインフラをモデル化・管理できるようになりました。これにより、既存の電力、ガス、水道の各ドメインのサポートが拡張され、通信特有の資産タイプや接続ルールもカバーされることとなり、ArcGIS Pro の開発者コミュニティーにとって新たな種類のネットワーク管理ワークフローが可能になります。
フレームワークとアプリケーション
今回のリリースでは、拡張性、導入、およびテーブル管理に関するいくつかの機能強化が行われています。
- ビュー ペインのカスタム ツールバー
開発者はビュー ペインにカスタム ツールバーを追加できるようになり、リボンだけに頼るのではなく、ユーザーが必要とする場所に直接表示される、コンテキストに応じたツールセットを利用できるようになりました。
- 名前付きカスタム ロード コンテキストへのアドインの並列読み込み
3.6 での並列分離機能の成果を踏まえ、今回のリリースでは、名前付きカスタム ロード コンテキストへのアドインの読み込みがサポートされました。これにより、チームは複雑なデプロイメント シナリオにおいて、依存関係のスコープ設定や分離をより細かく制御できるようになります。
- テーブル コントロールの機能強化
TableControl および TableView の新しいコマンド API とプロパティにより、アドインはフィールド演算、ジオメトリー演算、行の操作、および選択ワークフローをプログラムでサポートできるようになりました。また、AttachmentProperties API を使用すると、編集ワークフローで添付ファイルを追加または更新する際に、添付ファイルのメタ データをより細かく制御できます。
- Azure アドインの署名 — 更新とバグ修正
Azure Key Vault ベースのデジタル署名ワークフローは、バージョン 3.7 において、対象を絞った更新、機能改善、およびバグ修正が行われました。バージョン 3.6 でこの機能に関して問題が発生した場合は、改めて確認してみる価値があります。
ナレッジ グラフ
Knowledge Graph API はバージョン 3.7 で大幅に機能拡充され、リンク チャートの編集機能と調査レベルの設定管理の両方に注目すべき新機能が追加されました。
- リンク チャート コンテンツ編集
リンク チャート内のコンテンツをプログラムで追加、更新、削除できるようになり、アドインは基となるデータだけでなく、視覚的な調査レイヤーも完全に制御できるようになりました。
- 保存済みクエリーおよび FFP 設定の管理
Investigation API が拡張され、保存済みクエリー定義および保存済みフィルター付き検索パス (FFP) 設定へのアクセス、追加、更新、削除が可能になりました。これにより、アドインは UI に依存することなく、調査の分析構成要素を管理できるようになります。
- FFP 設定のインポート/エクスポート
開発者は API を通じて FFP 設定のインポートおよびエクスポートが可能になり、調査テンプレートのパッケージ化、共有、および環境間の展開が容易になりました。 - ファイル ベースのナレッジ グラフ
バージョン 3.7 では、SDK にファイル ベースのナレッジ グラフの作成および接続機能が追加されました。これは、ArcGIS Enterprise 向けのグラフ ストアに代わるより軽量な選択肢であり、ローカルでの開発やテストのワークフローにおいて有用な機能です。
Knowledge Graph API に関する詳細な情報については、ProConcepts: Knowledge Graph のドキュメントを参照してください。
ArcGIS Pro 3.7 をはじめる
ArcGIS Pro 3.7 および更新された SDK が利用可能になりました。
詳細の確認 : その他のアップデートで更新された機能については、API リファレンスの「What's New for Developers at 3.7」の「API Changes」セクションをご参照ください。
ダウンロード : Visual Studio Marketplace から ArcGIS Pro SDK 3.7 を入手し、インストールおよびアップグレードに関するガイドに従って環境を更新してください。
参考資料 : 新しい API に関する利用パターンや実装方法については、ProConcepts および ProGuide のドキュメントをご参照ください。また、実際に動作するコード例については、コミュニティー サンプルをご確認ください。
コミュニティーへの参加 : ArcGIS Pro SDK に関するフィードバックや開発中のプロジェクトについては、ArcGIS Pro SDK Esri Community でぜひ共有してください。
まとめ
本記事では ArcGIS Pro SDK バージョン 3.7 で追加された主な新機能についてご紹介しました。ArcGIS Pro SDK を使用し独自の機能をもったアドインを作成することで、ArcGIS Pro の拡張ができますので、ArcGIS Pro のカスタマイズを検討している方はぜひご活用ください。
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