はじめに
Esri では、ArcGIS Enterprise をはじめとする ArcGIS 製品向けにソフトウェア パッチを提供しています。これらのパッチは、セキュリティー脆弱性への対応や既知の不具合の修正、さらには製品の安定性・信頼性の向上を目的として提供されています。ArcGIS を安心して継続的に利用するためにも、各環境に応じて適切なタイミングでパッチを適用することが重要になってきます。
本ブログでは、ArcGIS Enterprise におけるパッチの概要をはじめ、適用方法や適用時の注意点についてご紹介します。
ArcGIS Enterprise におけるパッチ
ArcGIS Enterprise では、製品のリリース後もさまざまなパッチが公開されます。パッチを適用することで、既知の問題が解消でき、システムのセキュリティーや安定性も向上できます。
本記事では、ArcGIS Enterprise 向けに提供される主なパッチを、対象と目的に基づいて、次の 3 種類に整理します。それぞれ目的や適用対象が異なるため、以下で詳しくご紹介します。
セキュリティー パッチとは、製品リリース後に発見されたセキュリティー脆弱性を修正するための更新プログラムです。主に Portal for ArcGIS や ArcGIS Server 向けに提供され、脆弱性への対応だけでなく、セキュリティー関連の不具合修正や一部の既知問題の解決が含まれる場合があります。セキュリティー脆弱性を放置すると、不正アクセスや権限昇格、情報漏えいなどのリスクにつながる可能性があるため、ArcGIS Enterprise を安全に運用するうえで、セキュリティー パッチの適用は非常に重要です。原則として複数のバージョン向けに同時に提供されます。そのため、利用中の ArcGIS Enterprise のバージョンに対応した最新のセキュリティー パッチを確認し、速やかに適用することが推奨されています。
また、適用にあたっては、「ArcGIS Trust Center | Documentation」も併せてご参照ください。ArcGIS Trust Center では、セキュリティー、プライバシー、コンプライアンスに関する各種情報をご確認いただけます。さらに、毎月公開される ArcGIS Security Bulletin には、セキュリティー パッチに関する情報や、確認された脆弱性の詳細などが掲載される場合がありますので、ご確認いただくことをお勧めいたします。最新の情報(2026 年 10 月時点)については、「October 2026 ArcGIS Security Bulletin」をご参照ください。
(例)
- Portal for ArcGIS Security 2026 Update 4 Patch
- ArcGIS Server Security 2026 Update 2 Patch
- 不具合修正パッチ(セキュリティーに関する不具合を除く)
不具合修正パッチは、製品リリース後に発見された既知の不具合や品質上の問題を修正するための更新プログラムです。Portal for ArcGIS、ArcGIS Server、ArcGIS Data Store などの各コンポーネントを対象として提供され、特定の不具合の解消や安定性・パフォーマンスの向上を目的としています。
セキュリティー パッチが複数のサポート対象バージョン向けに同時に提供されることが多いのに対し、これらのパッチは特定のバージョン向けに提供されるケースが一般的です。そのため、利用しているコンポーネントやバージョンに該当するパッチが公開されている場合は、内容を確認のうえ適用を検討することが推奨されています。なお、これらのパッチは特定の利用条件に限定されず、対象となるコンポーネントを利用しているすべてのユーザーに対して適用が推奨されることが多くあります。
(例)
- ArcGIS Server 12.1 Analysis Tools Patch
- Portal for ArcGIS 11.3 Map Viewer HTTP/2 Patch
- ArcGIS Server Branch Versioning Licensing Patch
特定の製品やサーバーロール向けのパッチは、ArcGIS Enterprise で利用可能な ArcGIS Apps や各種サーバー ロールを対象として提供される更新プログラムです。これらのパッチは、対象とする機能や利用環境が限定されるため、適用前に対象バージョンや適用条件、修正内容を確認したうえで適用することを推奨します。
(例)
- Portal for ArcGIS 12.0 Enterprise Sites Update 1 Patch
- ArcGIS Server 11.3 Utility Network Patch 3
- ArcGIS GeoEvent Server 11.x Patch 1
パッチのリリース状況の確認
パッチのリリース状況は以下の方法で確認することが可能です。
- Esri テクニカル サポート ページ(ArcGIS Enterprise)
https://support.esri.com/ja-jp/products/arcgis-enterprise
ArcGIS Enterprise に関する技術情報やサポート リソースを提供するポータルです。ナレッジベース、既知の不具合情報、パッチ・アップデート情報、製品ライフサイクルなどを確認できます。
パッチ・アップデート情報ページでは、ArcGIS Enterprise 向けに公開されているパッチのリリース状況を確認できます。検索ボックスに利用中のバージョン番号を入力すると、対象バージョンに対応するパッチのみを絞り込んで表示できます。また、フィルターで「Patches & Updates」と「ArcGIS Enterprise」を指定することで、目的のパッチを効率よく検索できます。
https://support.esrij.com
ESRIジャパンが提供するサポート サイトです。技術情報、FAQ、パッチ情報、お知らせなどを掲載しており、ArcGIS 製品のサポート情報を幅広く確認できます。
Esri からパッチがリリースされると、まず Esri テクニカル サポート サイトに掲載されます。このうち、国内サポート対象となっている製品や機能に関するパッチは、弊社で適用検証が完了でき次第、「サポートサイトからのお知らせ」にも掲載されます。
そのため、国内でサポート対象外となっている製品や機能向けのパッチについては掲載されませんので、ご注意ください。
パッチのお知らせページでは、パッチの概要や適用を推奨する環境・ユーザーを確認できます。また、パッチの内容や適用手順、修正内容などの詳細を確認できるよう、各パッチに対応する Esri テクニカル サポート ページへのリンクも掲載されています。
- Check for ArcGIS Enterprise Updates(以下、パッチ通知ツール)
ArcGIS Enterprise の各コンポーネントがインストールされたサーバーで利用できる「パッチ通知ツール」を使用して、パッチの確認およびインストールを行う方法です。
このツールを利用することで、分散構成環境においてもコンポーネントごとに適用可能なパッチの有無を確認できるほか、すでに適用済みのパッチについても一覧で確認できます。
Windows 環境の場合は、[スタート]→[アプリ]→[ArcGIS]から起動できます。
パッチの適用
パッチは、Esri テクニカル サポート ページの各パッチ情報ページ、またはパッチ通知ツールからダウンロードして適用します。Windows 環境では、ダウンロードした msp ファイルを実行することでセットアップが開始されます。一方、Linux 環境では、ダウンロードした tar ファイルを展開し、./applypatch コマンドを実行してインストールを行います。
いずれの環境においても、ArcGIS のインストール ディレクトリーへの書き込み権限が必要になります。
なお、パッチを適用する際には注意点が 2 つあります。
Portal for ArcGIS Security 2026 Update 1 Patch や Update 2 Patch のように、同じパッチが段階的に更新されるケースがあります。このような場合、Windows と Linux ではパッチ適用時の挙動が異なるため注意が必要です。
Windows 環境で提供されるパッチは累積パッチのため、複数のパッチを適用する際にインストール順を意識する必要はありません。仮に古いパッチを新しいパッチの後に適用した場合でも、新しいパッチの内容が優先されるため、最新の修正内容は維持されます。また、パッチ通知ツールで「利用可能なすべてのパッチをインストール」を選択した場合は、リリース日の古いパッチから順番に自動適用されます。
一方、Linux 環境では、新しいパッチを適用した後に古いパッチを適用すると、古いパッチによって新しいパッチの内容が上書きされてしまう可能性があります。その結果、最新パッチに含まれていた修正内容が失われることがあるため、必ずリリース日の古いものから新しいものの順に適用する必要があります。なお、パッチ通知ツールを利用して「利用可能なすべてのパッチをインストール」を実行した場合は、Linux 環境でもリリース日の順に適用されるため、この問題が回避できます。
パッチの適用中は、対象となる ArcGIS Enterprise のコンポーネントが一時的に停止するため、サービスへのアクセスや一部機能の利用ができなくなります。
特に運用環境へ適用する際は、業務への影響を最小限に抑えるため、事前に十分なメンテナンス時間を確保したうえで実施することを推奨します。また、分散構成環境ではコンポーネントごとにパッチを適用する必要があるため、適用対象や作業手順、適用順序について事前に確認しておくことが重要です。
パッチ適用時のサービス停止および再起動の動作は、対象コンポーネント、OS、パッチによって異なります。適用前に各パッチの案内ページでサービスの停止・再起動に関する注意事項を確認してください。
適用後は、対象となる ArcGIS Enterprise コンポーネントが正常に起動していることを確認するとともに、公開済みサービスや利用中のシステムに問題が発生していないことについても併せて確認してください。
適用されたパッチの確認
適用されたパッチを確認する方法は、主に 3 つあります。
Portal for ArcGIS をインストールしている環境では、ArcGIS Enterprise 12.0 以降より、[組織]→[情報] 画面からご確認いただけます。
Esri テクニカル サポート ページの各パッチ情報ページ最下部に掲載されている PatchFinder をダウンロードし、適用済みのパッチを確認する方法です。
「パッチのリリース状況の確認」でご紹介したパッチ通知ツールを利用して、適用済みのパッチを確認することも可能です。
おわりに
本ブログでは、ArcGIS Enterprise におけるパッチの概要をはじめ、パッチのリリース状況の確認方法や適用手順についてご紹介しました。パッチを適切に適用することで、セキュリティーや安定性の向上につながり、より安心して ArcGIS Enterprise を運用いただけます。
本記事を通じて、ArcGIS Enterprise のパッチに対する理解を深めていただき、日々の運用にお役立ていただければ幸いです。
関連リンク
- ESRIジャパン 製品ページ
- 米国 Esri 製品ページ
- Esri テクニカル サポート ページ(ArcGIS Enterprise)
- ESRIジャパン サポート サイト
- ArcGIS Trust Center