2017 年 2 月 4 日(土) から 2 月 5 日(日)にかけて、RESAS x Japan Hackathon 〜地域の連鎖をデザインしよう!〜が開催されました。そのハッカソンで最優秀作品に輝いた 「Tsuredatsu」 について、よかったところから技術的なところまで、余すところなく大解剖してみます!
RESAS ハッカソン最優秀賞作品 「Tsuredatsu」
「寝たきりの高齢者を外に連れ出して、元気にしたい!」
このコンセプトのもとに、サービス開発が進んでいきました。このサービスの特徴は、同じ疾患を持つ仲間がいる体験教室やイベントを検索することができるということです。例えば「糖尿病」のキーワードから同じ疾患を持つ人が参加するイベントを探したり、地図上から医療施設・介護施設周辺のイベントを探したりすることができます。高齢者が楽しめるイベント情報を提示することで、健康寿命の底上げにつなげることを目的としています。
シニアの集まりから地域コミュニティを形成していくことで、すでに存在するコミュニティもより活性化が見込まれますし、地方創生や新しいかたちのまちづくりの一歩になりそうですね。
審査結果
このサービスの評価ポイントは、「シニア世代の需要」をとらえていることや、「RESAS 以外のデータも盛り込んでいけばサービスとしてしっかりローンチできそう」など、今後増大する需要にマッチし、RESAS データだけでなくそれ以外の提供データを巧みにマッシュアップできたことが高評価につながったようです。ユーザーの立場での利用価値が見込まれたほかに、地図上で 65 歳以上の人口データとイベント情報を可視化できるようにしたことで、イベントや体験教室を開く立場として「どこで開催するのがよいか?」などを策定できる点も評価されていました。
その一方で、高齢者がいきなり Web サービスを使うのはハードルが高いという課題もあり、ヘルパーなどの連れ立つ人が必要という意見もありました。
Tsuredatsu × 地図表示
さて、ここからは技術要素について解剖していきます。
「Tsuredatsu」では、疾患名でイベントを検索できる他に、地図上からもイベントや体験できる集まりを探すことができます。この地図は、アソビュー株式会社のイベント情報と、RESAS から取得した人口ピラミッドの 65 歳以上人口のデータを ArcGIS で可視化しています。
オレンジのポイントはイベント開催場所を表しています。緑のポイントは病院を、青いポイントは観光資源(寺社仏閣や公園など)を表しています。地図に色がついている部分は、65 歳以上の人口分布を市区町村ごとの色分けで表現しています。シニア人口が多くなるにつれて、濃い色で表現されています。
ArcGIS にデータを取り込んだだけで、地図表現に関わる部分などはノーコーディングで作成しています。
Tsuredatsu × データ表示
ArcGIS に取り込んだデータを Web サービスとしてホストすれば、ArcGIS の REST API でデータを取得することができます。
「Tsuredatsu」では地図を表示していない画面でも REST API を使用してデータを取得し、リスト表示やイベントの詳細画面を実現しています。この画面や機能は Ruby on Rails を用いて開発しています。
サービス全体の構成としては次の図のようになっていて、Heroku 上に構築した Web アプリを通して ArcGIS からデータを取得し、クライアントである Web ブラウザへ必要情報を表示しています。
今後の継続開発
今回行われた RESAS x Japan Hackathon 〜地域の連鎖をデザインしよう!〜では、最優秀賞に輝いた作品に「継続開発&事業化」を支援するための賞品が送られました。「Tsuredatsu」 を開発したチームは、その事業化のために、マーケティング調査や開発を進めています!ハッカソンからの作品が事業化に至ることは日本ではまだめずらしいので、ぜひ実現して地域創生の一歩になることを期待しています!
おわりに
いかがでしたでしょうか?
「Tsuredatsu」は、高齢化という社会問題への解決方法のひとつにうまくフォーカスしているサービスです。加えてこのサービスは、どこかの地域に偏ることなく、日本全国どこでも直面する問題の解決の糸口になっているところが素晴らしい点のひとつだと筆者も思いました。
今回サービス開発においても、GIS(地理情報)のクラウドサービスを使って、地図への可視化とデータ定義の部分を上手に活用して実現されています。
今回のハッカソンでは、「Tsuredatsu」 の他にも、多くのチームが地図でデータを可視化することを検討していました。ハッカソン中に Web サービスとして地図を表現することまでできなくても、データ分析や自分たちが使うべきデータを精査するために ArcGIS を活用していたチームもありました。このように、地図を用いた情報の可視化と分析は問題解決のアプローチとして大変有用です。今後の「Tsuredatsu」サービスが、地図を活用して新しい価値を創造するサービスとしてさらなる発展を遂げることをお祈りいたします。
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