Esri ユーザーカンファレンス 2020 のリアルタイム GISに関する Q&A

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10-12-2020 05:39 PM
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Esri ユーザーカンファレンス 2020 のリアルタイム GISに関する Q&A

はじめに

本記事は夏に開催された Esri ユーザーカンファレンス 2020 を受けて Esri のブログ記事として公開された「Real-Time Q&A from the 2020 Esri User Conference」の翻訳記事となります。

ArcGIS Analitics for IoT ArcGIS Velocity *1 という名前に変更されるため本記事ではリンク先の名前が変更されていない場合を除き ArcGIS Velocity を使用しています。また、リンク先の一部を日本語サイトに変更し、ヘルプ等の参照情報を追加しています。

Esri ユーザーカンファレンス 2020 のリアルタイムに関する Q&A

今年のバーチャルな 2020 Esri ユーザー カンファレンスでは、製品のショーケースだけでなく、ライブのテクニカル セッションでも多くの皆様とお会いする機会がありました。Esri 2つのリアルタイム製品である ArcGIS GeoEvent Server ArcGIS Velocity を中心に多くの会話が交わされたことに感謝し、最もよくある質問に対する回答をここにまとめました。この Q&A が、これらの製品の理解を深めるための参考になれば幸いです。

 

ライブに参加できなかった方や、再視聴をご希望の方は、以下の2020年のテクニカルセッションをご確認ください。セッションの視聴に UC 登録は必要ありませんが、動画にアクセスするには簡単なフォームに入力する必要がありますのでご注意ください。

Real-Time Across the ArcGIS Platform

ArcGIS Velocity: An Introduction

ArcGIS GeoEvent Server: Leveraging Real-Time GIS

カテゴリにアクセスする場合:

 General ArcGIS GeoEvent Server ArcGIS Velocity

一般的な質問

Q: ArcGIS VelocityArcGIS GeoEvent Server の違いは何ですか?

A: ArcGIS Velocity ArcGIS Online 用に開発されたもので、クラウド ネイティブです。ArcGIS GeoEvent Serverは、ArcGIS Enterpriseオンプレミス用に構築されました。どちらのプラットフォームもデータをライブで処理し、リアルタイムのイベント処理を行います。その違いは、ソリューションをオンプレミスに導入して自分で管理したいか、ArcGIS Onlineでホストされているソリューションを選択するかという点にあります。

Q: ArcGIS GeoEvent Server ArcGIS Velocity のイベント解析処理機能に違いはありますか?

A: GeoEvent Server ArcGIS Velocity の解析ツールには、いくつかの違いがあります。基本的なユースケース、すなわち、ジオフェンス、属性またはその他の基準に基づいたインシデントの検出、および空間的な関係に基づいたデータのエンリッチメントは、両方の製品でサポートされていますが、ツールは異なる方法で表現されています。ArcGIS Velocity では、ツールはArcGIS Online ポータルの空間解析ツールと連携するように配置および設計されており、リアルタイムまたはバッチで実行されます。GeoEvent Serverではフィルターやプロセッサとして個別に分類されるのに対し、ArcGIS Velocity ではすべての解析はツールの形態となります。

Q: ArcGIS Velocity ArcGIS GeoEvent Serverに置き換わるものですか?

A: いいえ。ArcGIS Velocity ArcGIS GeoEvent Serverを置き換える製品ではありません。GeoEvent ServerArcGIS Enterpriseのリアルタイムおよびビッグ データ集計機能であり、ArcGIS Enterpriseの主要なサーバーとしての役割を維持しているため、顧客は独自のインフラストラクチャまたはプライベート クラウドで柔軟に構成可能なリアルタイム解析を行うことができます。ArcGIS Velocity Kubernetes ベースのシステムであり、内部の仕組みは全く異なります。GeoEvent Serverはサーバーベースのソフトウェアであり、そのソフトウェア モデルを必要とする組織が多く存在するため、ArcGIS Velocity GeoEvent Server を置き換えることはありません。また、両製品には、今後のロードマップも別個に用意されています。

ArcGIS GeoEvent Server

Q: ArcGIS GeoEvent Server のライセンス形態はどのようなものですか?ArcGIS Enterprise Standard または Advanced に含まれていますか?

A: ArcGIS GeoEvent Server は、ArcGIS Enterpriseの複数のライセンス ロール1つです。GeoEvent Server のライセンスを取得してインストールすることで、Standard または Advanced ArcGIS Enterprise のデプロイメントにリアルタイム機能を追加することができます。GeoEvent Server は事実上あらゆるデータ プロバイダからのさまざまなデータ ストリームに接続できるように、すぐに使用できる構成可能な入力コネクタを提供します。GeoEvent Server は別個のサーバーにインストールする必要があります。ArcGIS ServerPortal for ArcGIS など、他のArcGIS Enterprise コンポーネントと同じマシンにインストールすることは推奨されません。

Q: ジオイベント サービスとは何ですか?

A: ジオイベント サービスは、データの取り込み、オプションのフィルター処理やプロセッサによる取り込んだデータの分析、データの出力までの一連のイベント データ処理の流れを定義します。リアルタイムのフィルタリングと処理は、ジオイベント サービス を通過するイベント レコードに適用されます。ここでは、いくつかのオンライン ヘルプ トピックをご紹介します。

入力コネクタの概要

出力コネクタの概要

フィルターとは

プロセッサとは

ジオイベント サービスの作成

Q: ArcGIS GeoEvent Server 10.8 および 10.8.1 の新機能は何ですか?

A: ArcGIS GeoEvent Server 10.8 および 10.8.1 では、操作性と機能に多くの改善が加えられています。これらの更新の詳細については、10.8 および 10.8.1 ブログ記事を参照してください(ArcGIS GeoEvent Server の新機能)。

Q: 4 コアの ArcGIS GeoEvent Server マシンは、1 秒あたり何個のイベントを処理できますか?

A: いくつかの考慮すべき事項があります。

 

(1) まず、GeoEvent Serverのシステム要件は、最低 8 コアの論理 CPU 100 Mbpsのネットワーク帯域幅、16GB のシステム RAM を備えたシステムを推奨しています。

 

(2) イベント・データがシステムを介してどれだけ速く流れるかは、一般的に CPU よりもRAM とネットワーク帯域幅に密接に相関しています。一方、より多くのプロセッサ/フィルターを持つものなど、より複雑な GeoEvent サービスを含むイベント処理は、イベント レコードを処理するために、より多くの CPU と時間を必要とします。

 

(3) データの取り込み、イベントレコードの処理、配信の観点からソリューションを検討することをお勧めします。

  • JSON 形式の比較的単純なデータを Web サービスでポーリングする入力は、簡単にデータに接続して取り込むことができるため、毎秒数千のイベントレコードを処理して作成することができます。
  • 従来のリレーショナル フィーチャ サービスを使用してオンプレミスでフィーチャ レコードを追加/更新する場合、通常、アウトバウンド側で出力されるフィーチャ レコードは毎秒数百件に制限されます。
  • ArcGIS Online でホストされているフィーチャ サービスでは、一般的にイベント レコード出力の速度が遅く(通常は 1 秒間に 100 フィーチャ レコード未満)、ビッグ データ ストアを使用するフィーチャ サービスでは、より多くのフィーチャ レコードを扱うことができます(1 秒間に数千フィーチャ レコードの取り込みレートを満たします)。

 

(4) もう一つの考慮点は、実行する解析の種類です。デスクトップ アプリケーションで利用可能なジオプロセシングツールを使用して解析モデルを実行している場合、解析を完了するのに数分から1時間かかることがあります。リアルタイムで実行される解析は、毎秒数百から数千のイベントを処理できなければなりません。1 秒間は 1,000 ミリ秒しかないため、GeoEvent Server は、処理またはフィルタリング操作に数ミリ秒以上を費やすことができません。例えば、ネットワーク データセットに対する複雑な解析を実行することはできません。

 

(5) イベントレコードのエンリッチメント、インシデント検出とモニタリング、または複雑なジオフェンスの大規模なセットに対するジオタギングなどのより複雑な操作は、実行に時間がかかり、GeoEvent サービスを通じて処理できる1秒当たりのイベント数に影響を与えます。単純なフィルタリングや値の計算は高速に実行できるので、イベントの速度にはそれほど影響しません。

 

(6) 詳細は、「デプロイメントにおける考慮事項」と、「スケーラビリティ、信頼性、レジリエンスのための戦略」のドキュメントを参照してください。

 

Q: GeoEvent Server の推奨サーバー コア数と RAM 容量は?

A: GeoEvent Server のシステム要件では、最低 8 コアの CPU100 Mbps のネットワーク帯域幅、および 16GB のシステム RAM を備えたシステムを推奨しています。

 

  • リアルタイムのイベント処理は、リソースを大量に消費します。
  • 4 コアの CPU 8GB RAM のみの「開発」または「プロトタイプ」用サーバーでも、単純で限定的な処理であれば十分かもしれません。
  • 本番環境では、サーバーを最低 8 コアの CPU 16GB RAM にアップグレードする必要があります。ビッグデータ ストアをホストするサーバーマシンには、少なくとも 32GB RAM が必要です。

Q: ArcGIS GeoEvent Server はどのようなデータ ストアを使用しますか?

A: GeoEvent Server は、ジオデータベースまたはその他のデータ ストアで受信したイベント データを格納または保存しません。ジオフェンス ジオメトリやイベント レコードのエンリッチメントに使用されるフィーチャ レコードからの属性データなど、操作のための重要なデータはメモリに保持されます。

  • GeoEvent Serverは独自のジオデータベースを持っていません。出力コネクタを使用してフィーチャ サービスに REST リクエストを行い、エンタープライズ ジオデータベースに新しいフィーチャ レコードを追加または既存のフィーチャ レコードを更新します。
  • 通常、処理されたイベント レコードのデータをジオデータベースのフィーチャ レコードとして保存する必要がある場合は、ArcGIS Data Store が提供する構成可能なオプションであるリレーショナル データ ストアまたはビッグ データ ストアのいずれかを使用します。

Q: ジオフェンス ポリゴンを作成するにはどうすればよいですか?

A: ジオフェンスに使用するジオメトリは、フィーチャ サービスを通じて公開されたフィーチャ レコードからインポートされます。フィーチャ レコードの作成と編集を可能にする Web マッピングアプリケーションは、ソースのフィーチャ レコードを作成して編集するために使用されます。GeoEvent Manager からフィーチャ レコードのインポートと、そのジオメトリの GeoEvent Server への登録を1回の操作で行えます。また、同期ルールを設定して、定期的にフィーチャ サービスをポーリングし、ジオフェンスとして登録されたジオメトリを更新することもできます。

Q: ArcGIS GeoEvent Server 10.8.1 を古いバージョンの ArcGIS Server と組み合わせて使用できますか?

A: バージョンの同一性は常に推奨されるベストプラクティスであり、コンポーネントのインストールを完了するには、GeoEvent Server と共に実行される ArcGIS Server が同じバージョンである必要があります。ただし、ArcGIS GeoEvent Server は、ArcGIS Server の古いバージョンを使用して公開されたフィーチャ サービスを含め、あらゆるソースからのデータ フィードに接続できます。フィーチャ レコードのポーリングやフィーチャ レコードの更新など、ArcGIS REST API に依存する統合は、古いバージョンの ArcGIS Server または Portal for ArcGIS への接続でも機能します。サービスの公開、サーバーのフェデレーション、およびビッグ データ ストアとの統合は、異なるバージョン間では機能しません。

Q: ArcGIS GeoEvent Server を導入するためのベストプラクティスは何ですか?

A: ArcGIS GeoEvent Server チームは、更新されたドキュメントクイック スタート ガイド、新しいインストラクター主導のトレーニング コース「Get Started with ArcGIS GeoEvent Server」などのベストプラクティスを共有するための資料をいくつか作成しました。

Q: ArcGIS Enterprise のポータルで ArcGIS Velocity を使用できますか?

A: ArcGIS Velocity は、ArcGIS Online のアドオン サブスクリプションです。現在、ArcGIS Enterprise ポータルでは利用できませんが、将来のリリースに向けて ArcGIS Enterprise のサポートが検討されています。

ArcGIS Velocity

Q: ArcGIS Velocity ArcGIS Online の追加アプリですか?

A: ArcGIS Velocity ArcGIS Online の追加アプリであり、ArcGIS Velocity Online サブスクリプションに追加した組織が利用できます。ArcGIS Velocity が追加されると、Creator ユーザータイプ以上のユーザーは誰でも ArcGIS Velocity へアクセスすることができます。

Q: フィードは ArcGIS Online のクレジットを消費しますか?

A: 現在のArcGIS Velocity リリースでは、フィードはクレジットを消費しません。ArcGIS Velocityは、あらかじめ定義された計算能力とストレージが付属するサブスクリプションです。ArcGIS Velocity は、高速なデータの取り込みと大容量データを保存できるように設計されているため、ArcGIS Online のクレジット モデルはリアルタイム データには適用されません。Esri は、お客様のニーズに基づいて ArcGIS Velocity のサイズを調整し、基本のArcGIS Velocity サブスクリプションで速度とボリュームが十分なのか、あるいは追加の計算能力とストレージが必要なのかを支援することができます。

Q: ArcGIS Enterpriseで、いつ ArcGIS Velocity を利用できるようになりますか?

A: ArcGIS Velocity は、現在は ArcGIS Online でのみ利用可能です。ArcGIS Enterprise のサポートは、今後のリリースに向けて検討が行われています。

Q: ArcGIS Velocity は、自社のクラウド環境でのデプロイに利用できますか?

A: ArcGIS Velocity は現在、Kubernetesシステムを用いています。Esriは、将来のリリースで ArcGIS Velocity ArcGIS Enterprise に統合することを検討しています。その場合、お客様は ArcGIS Velocity を使用してArcGIS EnterpriseKubernetes上で実行し、そのデプロイメントでリアルタイムおよびビッグ データ機能を提供するオプションを利用できるようになります。ArcGIS Enterprise on Kubernetes の詳細については、このUC 2020 Q&Aを参照してください。ArcGIS GeoEvent Server ArcGIS GeoAnalytics Server *2 ArcGIS Enterprise で使用するオプションは、今後も引き続き利用可能です。

Q: ArcGIS Online ArcGIS Velocity を使用する場合と、Azure または AWS のクラウド環境で ArcGIS GeoEvent Server を有効にした ArcGIS Enterprise を使用する場合と比較して主なメリットは何ですか?

A: 主なメリットは3つあります。

ArcGIS Velocity の方が使いやすく、組織内のユーザーが直接アクセスしやすい。

ArcGIS Velocity は、維持するためのオーバーヘッドや管理を必要としない。

ArcGIS Velocity は、現在の GeoEvent Server よりも高速で大量のデータ用にスケールできる。

Q: ArcGIS Pro ArcMap でビッグ データ ツールを利用できますか?

A: ArcGIS GeoAnalytics Server のツールは、ArcGIS Proで利用できます。

Q: ArcGIS Velocity ユーザー エクスペリエンスは、ArcGIS GeoEvent Server のそれに取って代わるものですか?

A: いいえ。これらは両方とも非常に異なる製品であり、一方の製品のフロント エンドを別の製品に置き換えることは現在のところ計画されていません。

Q: ArcGIS Velocity SDK で拡張することはできますか?

A: 現在のところ、ArcGIS Velocity は管理されたホスティングサービスの SaaS であり、すべてのユーザーに対して同じ実装を提供しているため SDK で拡張することはできません。ArcGIS Enterprise ArcGIS Velocity がサポートされた場合は、ソフトウェアはユーザー環境に導入されるので、SDK がサポートされる可能性があります。

Q: ArcGIS Velocity は、個人でも組織でも利用できますか?

A: 現在の ArcGIS Velocity のビジネスモデルでは、一人のユーザーでは利用できません。ArcGIS Velocityは、組織で必要とされるビッグ データの速度と量により適しています。

Q: ArcGIS Velocity の評価版は利用可能ですか?

A: ArcGIS Velocity には、現在のリリースでは評価版プログラムがありません。ただし、これは現在検討中であり、Esri は今後のリリースで評価版を提供する可能性があります。

ArcGIS Velocity の詳細については、こちらを参照してください。

参考情報

Real-Time Q&A from the 2020 Esri User Conference

GeoEvent Server スタートアップ ガイド(日本語)

*1:ArcGIS Velocity は現在、国内未サポートです。

*2:ArcGIS GeoAnalytics Server は現在、国内未サポートです。

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